先日、遠く島根のS様より「お任せするのでメンテをお願いしたい」とのご連絡をいただきました。
そして、数日前にでっかいダンボールにケースごと送られてきました。
今までのケースからするとパキスタン製が多いのですが、
Sさんのパイプはスコットランド製のものとのことでした。
パイプ本体一式とソール付きチャンターが1本、それにプラチャンが4本…
それぞれチェックを行います。
パイプはMacCallum製のブラックウッドで、フェラル・スライド・リングキャップがニッケルメッキ仕上げです。
ドローン先端の「鼻の穴」のブッシュのデザインは、現行モデルとは違うので、デザイン変更される前のタイプでしょうか…?
ポリペンコ製のチャンターには「MacCallum◎Bagpipes」のロゴが刻印されています。
バッグはBannatyn製のハイドバッグで、サイズはMとSの中間タイプのESです。
このバッグ、カタチは垢抜けないのですが脇に吸い付くようでKoiwai は気に入っています。(笑)
ブローパイプはMacCallumオリジナルではなく、Airstream製の吹き口が平らで内蔵空気弁が大きい実用タイプのものです。
ただ、マウスピースにはゴムのプロテクターが取れてしまっていたので、咥えにくかったことと思います。
弾力のないABS樹脂を直接咥えるので、歯にとっても良くはありませんね。
バッグカバーはグリーンのベルベットで、肌触りも滑らかで平均的なものよりずっと材質が良いです。
コードはシルクタイプですが、画像では分かりにくいですが経年劣化からか若干色落ちしてしまっています。
ここは新しいものと交換しても良いですね。
もう1本付属していたパイプ・チャンターですが、ナント!ソールが象牙で作られています。
刻印が一部消えていてとても読みにくいのですが「Robertson」製です!
今ではとても貴重なものと言えますね。
お次はプラチャンです。
まずはGibson製のアフリカン・ブラックウッド。
上部はポリペンコ製で大きく肉厚なのでとても重く感じます。
次はD.Nail 製で同じくポリペンコ / アフリカンブラックウッド製ですが、若干細身と言えるでしょうか…
どちらも音色が柔らかく、お上品な感じですね。(笑)
3本目はスタンダードタイプのポリペンコ製ですが、メーカーが分からないのでパスします。
ただしとても吹きやすいですね。
Koiwai がとても気になっていた4本目です。
メーカーは分かりませんが、アフリカンブラックウッドではない赤味の材質と仕上げがとても良いのです。
材質名は断定できませんが、パキスタン製の色付きニスとは比べられない程の高品質なプラチャンです。
パキスタン製もここまで上質に作ってくれるとありがたいのですが…
ただ、真鍮製のフェラルが強力に変色してしまっているので、仕上げは難航しそうです。
さてパイプ本体に取り掛かります。
まず気になったのは、各ストックに巻かれているテープです。
テープ自体は強度もあり良いのですが、そのベタつきです。(汗)
触るそばから手がベトベト、ベトベト…(泣)
通常、ストックはバッグから抜くこともないのですが、これではどうすることも出来ません。
一旦全て外して洗浄することにしました。
また、テナードローンの1本に何やらテープがいっぱい巻かれています。
これは一体どうしたのでしょうか?
取ってはみたものの、特に何か問題があったようには見えません。???
チャンター・リードはダメになっていましたが、ドローン・リードは新品同様の「Selbie」製です。
メンテナンス内容は、木部のクリーニング及びオイルによる保湿でのリフレッシュ、各ヘンプの巻き直し、空気漏れ対策の保険としての各ストックへの自己粘着テープ巻、ブローパイプの洗浄プラスプロテクターの装着、金属部分の緩みの固定と艶出し、一部マウントの欠けの補修、ついでとして各プラチャンのポリッシュ、&チャンター・リードの加工といったところです。
全てが準備整った次第最後にオイル漬けに入ります。
まずは1回目として木部にオイルをある程度吸わせます。
このあたりの作業がKoiwai にとっては至福の時間なのです。(笑)
頃合いをみて、一旦オイルを拭き取ります。
木によっても吸い付きが違うのが画像でも分ります。
マウスピースにプロテクターを被せました。
これで咥えが楽になるかと思います。
オイルを吸い込ませている間に、欠けているマウントを補修します。
直した形跡がありますが、まだ不十分なのでタッチアップを行います。
イミテーション・アイボリーは本物と比べて遥かに強度が弱いので、結構簡単に欠けてしまったり割れてしまったりします。
ドローンの扱いには十分注意が必要ですね。
今回は小さく陥没している部分でしたのでエポキシ接着剤を混ぜあわせて埋め込み、
完全硬化してから整形・ポリッシュ・塗装を行いました。
加工自体は問題ないですが、塗装での色合せは使われている象牙風の色にはなかなか近づけるのが難しいので取り敢えずといったところです。
パイプ自体のメンテは、再び木部へのオイル漬け・ヘンプ・ポリッシュを行なった後、コードの取り付けとカバーを被せて終了しました。
気になったプラチャンには、銃床での亜麻仁油によるオイル仕上げと同じ方法をとりました。
オイルが乾いては手で擦ることを何度も繰り返します。
やがてニスとは違った鈍い艶が出てきて、時間と共に飴色になっていくことでしょう。
今回もいろいろ楽しく出来ました!S様ありがとうございます。
島
面白どころ満載でしたね!渋いパイプですねえ、僕はコードの枯れ具合好きです(笑) プラチャンを四本もお持ちとは。本象牙のソールなんて現代では買えませんしねえ。まだまだ日本にはお宝バグパイプが眠ってそうだなあとの感想をもって読ませていただきました。
koiwai
島さん
ありがとうございます。
人様のパイプを元気にさせるって本当に楽しいですね。
そうですね、ある意味渋いかもしれません。
コードの枯れ具合はそのパイプにとっての歴史ですので、それもありかもしれません。
プラチャンはどれも味があっていいですよ。
象牙ってプラでは絶対に再現できないので、今では本当に貴重ですね。
そうなのです。今でも押入れの中などで「仮死状態」のパイプがまだまだあるかと思います。
半ば埋もれてしまっているパイプをリフレッシュさせてあげたいのです。
柳 博
こんばんは。柳です。
今回もとても勉強になります。
Sさんは、どのくらいの演奏歴の方なのですか?
毎回拝読させていただいていると、koiwaiさんが以前ビンテージや中古が好きです。と話されていたのが、理解出来ます。
こんなに手をかけてあげたら、クルマの世界での「中古車ではなくビンテージカーです。」というのと同じですね。
私は演奏が終わって、楽器に話しかけながら磨いている時に、とても愛おしくなります。同じなんですね。
koiwai
柳さん
こんばんは。いつも有難うございます。
S様ですが演奏歴はわかりません。
私がやっていることなんて勉強のうちに入らないので、そのように仰られると恐縮してしまいますよ~(汗)
新品はそれもまた良いのですが、中古の特にビンテージはそのパイプがたどった時間を感じるのです。
少々の傷や汚れなんて勲章のようなものです。
人が見たら痛みきったパイプだとしても、それなりに愛情込めて手を加えれば再び生き返ってくれるのですね。
今回は元々状態が良いパイプでしたので問題ありませんでしたが、たまに「うわっ!」と思う程イッちゃってるパイプもあります。
困らせるパイプ程腕が鳴るんです!(笑)
どんな物でもそうですが、愛着持って接すれば気分もいいし良い状態を長く保てるはずです。
今わかったのですが、パイプが好きでも話しかけたことは一度も無かったです!
柳さんの方がはるかにパイプ好きなのかもしれません。(笑)
島根のK
いやあ~、島根にもこんなパイパーさんがおられたのですね! 私一人かと思っていました。パイプをはじめてから県内で他のパイパーとの遭遇経験が皆無でしたので感動です。
この世界は狭いので、いつかどこかでお会いできることを楽しみにしたいと思います。
koiwai
島根のKさん
まずペンネームウケました~(笑)
いいですね!
島根のS様は県内の左端に近い大きな街にお住まいなので、同じ島根でもかなり距離があるかと思います。
貴重なお方ですので、いつかお会いできる機会が持てると良いですね。
合宿が今週末となりました。
これでKさんのスポーランとベルトの出番がやっと来ましたね。
昨年よりかなりパワーアップした合宿になることは間違いないです。(笑)
島根のK
本日「島根のSさん」と初めて電話でお話しすることが出来ました。県内とはいえ200km以上離れていますので、なかなかお会いできないとは思いますが、お互い辺境にあって孤独に苦学する仲間を発見し合い、幸せでした。ご紹介いただきありがとうございました!
koiwai
島根のKさん
こんばんは!
お話することが出来て本当に良かったですね。
それにしても同じ県内なのに200km以上離れているとは驚きです。
Kさんの豊富な知識と経験で、S様への力になっていただけたらこんなに嬉しいことはありません。
これからもどうぞ宜しくお願い致します。