先日、京都にお住まいのI様より「空気が抜けてしまうので見て欲しい」との事でパイプを送っていただきました。
I様はKoiwaiと同様、戦争映画でのバグパイプ演奏シーンで虜になってしまったそうで、習得に向けて並々ならぬ意欲をお持ちの方です。
I様のパイプは日本のある業者から30万円!で購入されたとの事でしたが、
Koiwai はよくありがちなパキスタン製なのでは?と危惧していました。
そしてパイプを早速送っていただきました。
ケースを開けてみて、びっくりというかパキ製でなかったのでホッとしましたね。
チャンターの首根っこにはかろうじて「BAGPIPES」の文字が読めますが、
その下に刻印されている文字は「C」と「A」しかなく、間にあるはずの文字が消えています。
おそらく「CALEDONIA」だと思いますが…
多分製造時のポリッシュで刻印がこすれて無くなったのだと思います。
Koiwaiの勉強不足のためメーカーが特定できませんが、スコットランド製であるのは間違いなさそうです。
このパイプの仕様ですが、
アフリカンブラックウッドのニス仕上げで、マウントが一体でフェラルがニッケル、リングキャップのみイミテーションアイボリー、バッグは昔ながらの革製で空気弁も革製です。造りもしっかりしています。バッグカバーはウールで、カバーに使われるタータンとしては珍しい「Campbell」の柄です。(Koiwaiのキルトの白と黄のラインが無いバージョン)
バッグのフリンジとコードは白のウールです。チャンターはポリペンコ製です。
このパイプ30万円との事ですが、Koiwaiでしたらもっと安くI様のお好みに沿ってご提案出来たのでもったいなかったと思います。
パイプの状態は殆ど未使用ですが、1ヶ所テナーのリングキャップが割れていてめくれ上がっていました。
また、ボアと空気弁にはオイルを与えられていなくカサカサ状態です。
長い間「そのまま」だったのか、各ジョイントの麻糸もすっかり乾燥して多くが緩い状態で、フェラルもいくつか取れてしまっていました。
問題の革製バッグですが、空気を入れてみたところあちこちから漏れています。
これでは誰が吹いてみても無理ですね。
Koiwaiはパキ製とかの手が焼けるパイプには意地と根性で挑みますが、このパイプのように弱っている?パイプに対しては俄然なんとか元気になってもらおうと意欲が湧いてきます。(笑)
ということで、まずはバッグのシーズニングから始めました。
↓画像のブローパイプはMcLeodのものを差しています。
当初、シーズニングはいつものように済むだろうと思っていましたが、これが甘かったです。
完全にシーズニング地獄に陥り延べ3日費やしましたね。
普通はこの処理で目止めされて空気漏れは無くなるのですが、
このバッグほど何やっても言うことを聞かないバッグはありませんでしたね。(泣)
シーズニングを3度!、外からのゴムによる目止めを相当量!
I様へはコストの負担を軽くしたかったので、極力元のバッグを再生する方向でいましたが、
結局は保険として用意しておいたバナタイン・ハイドバッグが解決してくれました。
その間にやることを全て済ませました。
リングキャップの割れはよく起こり得るので注意が必要です。
めくれ上がる事はまれですが、補修の際しっかり押さえないといけません。
ものによってはパテで完全にわからなくすることも可能ですが、注意を促すためにあえて補修跡を残しています。
I様からご指定があったマウスピースのカットですが、5センチのところをあえて3センチにしました。
これはパイプに慣れていないために、姿勢などによって長く感じてしまうからです。
一度カットしてしまうと元に戻せません。昔、実際にこのようなケースがありました。
途中バッグが大きな壁となりましたが、オイルやポリッシュなど外部・内部ともKoiwaiが出来ることは全て終えました。
使わなくなった白のシルクコードがあったので、これはおまけとして付け替えました。
コードは、シルクの方が断然揺れがキレイなのです。
チャンターリードはソフトにして吹きやすくしたものに替え、ドローンリードも合成に替えて弱めに調整しました。
取り敢えず楽に吹けるようにはなりましたので、あとはI様の体力と情熱ですね。