Dunbar ヴィンテージ バグパイプ

先日、福岡のOさんから「D Throw のMさんよりダンバーのパイプを手に入れることができたので、修理ついでにメンテをして欲しい」とのご連絡をいただきました。
Oさんもかなりのバグパイプ好きで、既に7~8セットもパイプを所有しているのです!
Oさん、間髪入れずハードケースごと速攻で送って来られました!(笑)

まずはダンバーのパイプの仕様です。
◎1970年製
◎マウスピース・フェラル・チューニングピン・リングキャップはシルバーの手掘り彫刻仕上げ(アザミのデザイン)
◎プロジェクティングマウントは、色合いが象牙に似たツゲのような硬い材質の木製
◎アフリカン・ブラックウッド表面はニス仕上げ
◎ドローン先端のブッシュはカタリンという材質
◎パイプバッグは、バナタイン製のジッパー付き合成バッグ
◎バッグカバーは、緑のベルベット地にワインカラーのフリンジ
◎コードは、ロイヤルスチュワート柄





シルバーの彫刻はかなり凹凸が深いものです。
しかし豪華なパイプですね~羨ましい(笑)
また、ブッシュのみカタリン製は普通あり得ないので、恐らく前オーナーがカタリン製のマウントを木製に付け替えたのでしょう。

Oさんのご要望は以下のとおりです。
◎テナードローンスライド上部の「肩」の一箇所が欠けているので、元のように直して欲しい


◎全体的なメンテナンス

Koiwai が見た限りこのパイプは特に問題が無いようなので、プラスαとして木製マウントを出来るだけ「象牙っぽく」見えるようにタッチアップします。
あとはシルバーのポリッシュくらいでしょうか…

ということで早速作業開始です。
問題のテナーはコードを外して作業しやすいようにします。
ついでに他の部分もコードを外します。

まずは、問題の部分を残して周囲をくまなくテープで何重にも養生します。(キズ防止)
マスキングテープだと細い溝には密着しにくいので、幅広のポリエステルテープを選びました。

粉状にしたブラックウッドをキズに盛りつけます。
当初ブラックウッドの木片を接着しようと思いましたが、接地面が確実でないので変更しました。

盛り付けが終わったら、余計な部分を綺麗にします。
そしてアロンアルファを様子見ながら慎重に含ませます。
瞬間接着剤は木との相性が良く、粒上だと瞬時にがっちり固まります。

完全に固まったら、今度はガムテープで更に周囲を保護します。

そして修復したい部分のみヤスリで削っていきます。
とにかく慎重に、急がず焦らず少しずつ…
周囲を養生しているとはいえ、ヤスリの歯が触れないように気をつけます。

大かた削り終えました。

サンドペーパーでならして表面を確認します。

まだまだ納得出来ないので、更に盛りつけ→削り→研磨を繰り返します。
サンドペーパーとコンパウンドによる研磨も、同じように弱い力で牛歩のように進めます。
下地がどうにかこうにか出来ましたが、やはり完璧は無理ですね。(汗)
あとはKoiwai 特製オイルで仕上げます。
↓10日以上かけてオイル仕上げした結果です。

各ジョイント部分のテンション具合の調整、シルバー磨きも終わりマウスピースのプロテクターも付けたので、最後はマウントのポリッシュです。
ニス仕上げが手っ取り早く艶が出ますが、マウントの外周はよくぶつかり合う部分なのでニスだと取れてしまいます。
なので、ここも別の特製オイルとポリッシュで仕上げることにしました。
しかし、この材質は艶が出にくいですね。
木部の艶出しの良し悪しは、下地の磨きにかかっています。
オイル仕上げする前の下準備に相当時間がかかりましたね。(汗)
プラ用のペースト状コンパウンドから始め、プラ仕上げ用の♯10000くらいの液状コンパウンドで下地を作りました。
艶出しにも効果があるメリヤスで十二分に乾拭きし、特製オイルをほんの少し指に付けては摩り込みます。
割りと速乾性を持たせてあるので、あとは手の平が熱くなるまでこすります。(笑)
これも10日程かけて完了しました。

↓Koiwai のパイプの象牙と並べて撮ってみました。(奥がダンバー)
色合いも雰囲気も木とは思えない感じです。
画像より実物の方がもう少し艶があります。

オイル仕上げによる時間の関係で長丁場でしたが、楽しい修理とメンテを終えることが出来ました。
Oさん、ステキなパイプに触れられる機会をくださりありがとうございます!


4件のコメント

  1. パイパー森

    今回も、Koiwai さんの素晴らしい手技、十分に堪能させていただきました。お見事!
    シルバーの彫りがイイですね。
    コンピューター制御で彫る、なんていう無粋な技が出回る前はいい時代です。

  2. 地道で丁寧なお仕事、お疲れさまでした。ここまで来るとアートですね。Oさんも満足される仕上げのように思いますし、こちらの手が届かなかった所を補っていただき、ありがとうございました。

  3. ★パイパー森さん

    お褒めの言葉をいただき、また、堪能してくださりありがとうございます!!
    お陰様でパッと見どこを修復しのかわからない感じにすることができました。
    仰るとおり手掘りのシルバーってとても味があってイイものですね。
    キッチリカッチリの回転するドリルの刃には絶対できない、溝の角度や彫りの強弱、手作業感だと思います。

  4. ★FPCさん

    100%手作業なのでどうしても時間がかかりますが、お客様の大切なパイプなので丁寧な扱いと作業を心掛けています。
    アートだなんて!お恥ずかしい限りです。(笑)
    修復よりもオイルによるポリッシュの方が大変でしたね。
    こちらこそありがとうございました。
    FPCさんのおかげで、素晴らしいパイプに触れることができました!

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