Mさんのバグパイプ・メンテナンス

昨日からレッスンを始められたMさんですが、
以前ヤフオクで手に入れたというバグパイプをお持ちだったのでもしや「パキ製」と危惧したのですが、レッスン初日にそのバグパイプを持って来てくださいました。

まず目に飛び込んできたのがShepherd製と思われるブローパイプだったのですが、あちこち見ているうちにどうもMacCallum製です。
フルイミテーションアイボリー仕様のAP3で、スライドだけニッケルメッキした補強材としてのパイプを被せてあります。
チャンターはポリペンコ製。
バッグカバーとシルクタイプのコードは、ロイヤルブルーです。
見た限りキズや欠けもなく特に問題はありません。
前オーナーはもちろんMさんも殆ど使っていないくらい新品に近い状態です。



特筆すべきはGANNAWAY製の革製ジッパー付きパイプバッグが付いていることです。


以前、Koiwai は友人のJMさんのGANNAWAY製バッグが付いたパイプを吹かせていただいたことがあるのですが、その佇まいとフィット感はなかなかのものです。
ただ、全てのストックは金属のクランプでタイインしているので、クランプがむき出しのままではパイプその他を傷つける恐れがあります。

他に付属としてあったのが、Shepherd製?のブローパイプとエアストリーム製のマウスピースで、Shepherd製合成ドローンリード(SM90)のテナーが1個と割れてしまっているチャンターリードです。

まず初めに取り掛かったのは、クランプの締め上げと自己粘着テープによる保護です。
各クランプは、どれもが簡単にドライバーが回るのには驚きました!


この状態だとここからの空気漏れの可能性もありますね。
また、チャンターストックの前面にクランプのスクリューがあっては見た目も良くありません。
自己粘着テープで何重にもクランプのエッジを覆いました。

お次は、バッグ内へのシーリング液の塗布です。
Koiwai のバッグはL&M製SCOTHIANのグロメットですが、これはBannatyne製のHide Bagとは違って時々シーリング液とトリートメントをバッグ内部に塗る必要があります。
このGANNAWAYのバッグも基本L&M製と同じなので、白い乳液のようなシーリング材を塗り込みました。

このシーリング材ですが、木工用ボンドの匂いと全く同じなので、もしかしたら成分はとても似ているのかなって思います。
以前、Koiwai のバッグに実験的に木工用ボンドを薄めたものを塗ってみたことがあるのですが、その後特に何の問題もないので「困った時の裏ワザ」になるかもです。(笑)

お次は、ジッパーへのグリスです。
ジッパー付きの合成バッグは、定期的にジッパーの合わせ目と端にグリスを与えて空気漏れを防ぐ必要があります。
ハイランドバグパイプのジッパーには、「専売特許」的なTIZIPが使われています。


つける時期とか間隔は特に決まっていないようですが、まあ3ヶ月に1度やっていればまず安心です。
つけ方は人それぞれですが、Koiwai は構わず指先に少し取ってジッパーの凹凸に伸ばすように刷り込んでいきます。
特に最後の端はグリスがはみ出る程度にして、ジッパーの開け閉めを何度かやってから閉じた状態ではみ出したグリスを拭き取ります。

バッグ内部を乾かしている間に、各パイプのジョイント部分のテンションを調整します。

次は楽しい時間です。(笑)
アフリカン・ブラックウッドにオイルを与えるのですが、特にこのパイプはまだオイルの「洗礼」を受けていないようなのでやりがいがありますね。(笑)
まずは、ブラシを使って各ボア(内部)に植物系3種配合の「Koiwai 特製オイル」をたっぷりと刷り込みます。
ボアが広い部分は、柔らかい豚毛ブラシ(はぐきマッサージ用)を使っています。

内部が終わったら表面にオイルを刷り込みますが、今回は最初だけ薄めのリンシードオイル(亜麻仁油)を平筆を使って刷り込みます。
このオイルは先のオイルとは違って時間と共に固まって酸化皮膜を作ります。
完全に乾いてから手で磨けば、適度に艶も出て表面をある程度保護もしてくれるのです。
これは銃のストックやグリップ仕上げの応用ですね。
この時注意したいのは、ベタベタに塗ってしまうと表面の溝にオイルが厚くついたまま固まってしまうので、筆に含むオイルは殆ど無いくらいのカサカサが丁度良いです。
更に手に平で全体を伸ばしてから、ティッシュなどで軽~く拭います。
木の状態によってはあと数回行なっても大丈夫かと思います。

コードの状態ですが、ベースドローンのトップから外れていたのと結束バンドのカットの仕方が良くないので一旦外します。
カットされたエッジがコードを傷つけバサバサにしてしまうので、カットする際はニッパーで根本から切ります。

外すとコードが元の状態の曲がついているので、蒸気を吸い込ませてクセを取ります。(↓使用前)

(↓使用後)

メンテのゴールはもう見えています。
スライドのニッケルはコンパウンドで磨いてくすみを取り、ドローンとコードを繋げ、マウスピースにはプロテクターを被せ、ベルベットのカバーの糸くずを丁寧に取り組み立てて終了です。


木部表面は吸い込みが激しいので、時間をかけてオイル仕上げを施したいですね。

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