アフリカン・ブラックウッド・チャンターの表面処理

昔から、グレートハイランドバグパイプのチャンターの殆どはアフリカン・ブラックウッド製でしたが、今ではポリペンコ製が普通となってきました。
ポリペンコ製は、アフリカン・ブラックウッド製と較べて丈夫で安いことです。
うっかり落としてしまったり、ストックへの抜き差しでチャンターの「頭」を握らずに回しても壊れることはまずありません。
それとは反対に、アフリカン・ブラックウッド製はとてもデリケートなので扱いには神経を使います。
構造的に肉厚を薄くして繰り抜いてあり、上部ほど細くなっているのでこの辺りが外からの力に対してとても弱いのです。

アフリカン・ブラックウッドのチャンターの魅力は、音の質感の良さだと思います。
ポリペンコ製も音に張りがあって決して劣らないのですが、
アフリカン・ブラックウッド製は感覚的にわずかながら音色に「優しさ」を感じます。
例えて言うなら、温泉のお湯の「硬い」「柔らかい」の違いのようなものでしょうか…
今では高級志向・グレードアップ版のような位置付けにさえ感じます。(笑)

アフリカン・ブラックウッドはとても硬い木ですが、やはり木製なので時に潤いも必要です。
たまに表面を植物系オイルで拭き伸ばせば十分です。
ニス仕上げされているチャンターはオイルは殆ど必要ありません。
ただ、音を奏でるうえで頻繁に指を動かすので、どうしても各ホール周りと右親指が当たる部分はオイルが抜けてしまったり、ニスが取れてしまったりします。
元々殆どオイル仕上げされていない状態なのと、材質自体に多少油分が含まれているのでそのまま使っていても問題ないのですが…
オイルやニスを塗ることで木目のコントラストが無くなり色も濃くなるので、「潤い派」と「乾燥派」の好みに分かれるかと思います。

前置きがとても長くなってしまいましたが、手許のアフリカン・ブラックウッド製のチャンターに対し、強度と艶を併せ持つ実験をしてみました。
それは無謀ではありますが、アフリカン・ブラックウッドのチャンターの表面を瞬間接着剤で覆ってしまうことです。
ここでまたマニアックな話題となりますが、例えるなら戦車の鋼材の表面硬化で用いられた、鉄の表面に炭素を染み込ませる「浸炭法」のようなものですね。(笑)
鉄の表面に炭素を染み込ませることで表面が硬くなるのです。
この実験の発想はここから来ています。
瞬間接着剤は木部ととても相性が良く喰い付きも強固で、硬くなった表面は磨けばガラスのような艶になります。
瞬間接着剤は「サラサラタイプ」を使いました。
因みに瞬間接着剤(略して瞬着)は、冷蔵庫で保管すると長期保存できますよ。
よくあるクレヨンくらいの容量だと返って高くつくので、Koiwai はボトルを使っています。
去年の秋くらいに買ってから未だに固まることもなく使えているのがいいですね。(すぐに冷蔵庫にしまうのがコツです)
ただ、瞬間接着剤と言われるだけに、平筆などで塗ろうものならその場で筆が固まってしまうのです。(笑)
また、筆が使えないのでつま楊枝などで少しずつ塗り伸ばしていくのですが、どうしても塗り跡がガタガタになりダレた分だけ盛り上がって固まってしまいます。
多少凸凹してもサンドペーパーで均すので構わず塗っていきますが、ホールの内側や溝などには避ける必要があります。

↓これは、ペーパーがけしてコンパウンドで磨いたものの、部分的に瞬間接着剤の皮膜まで削ってしまったためにもう一度瞬間接着剤を付けた状態です。
 

↓再度ペーパーがけした状態です。若干まだ表面に凹凸が残っています。

瞬間接着剤の皮膜の厚さの差が分かりにくいので、サンドペーパーの手加減が非常に難しく何度かタッチアップしながら進めるしかありません。(汗)
プラモでいう下地処理のサーフェイサーと似ています。
調子こいてペーパーがけしているとすぐに木の地肌が現れてしまうからです。(泣)
粗さも♯400くらいから始め、600、1000、2000とかけていきます。
力むのはご法度で、状態をよく観察しながら慎重に…

↓どうにかこうにか終了しました。まだコンパウンド磨きにムラがありますが、のんびりと仕上げたいですね。

これによって表面は硬くなり滑らかな艶も得られたので、実験的には概ね意図したとおりとなりました。
ニス仕上げよりは遥かに皮膜が強いので、もう油分が取れて艶を失うことはないかと思います。
ただしハイリスクなので、この加工は人様のチャンターには行いたくないですね。(笑)

2件のコメント

  1. 柳 博

    いつも楽しく拝読させていただいています。柳です。
    私のミュゼットはアフリカンブラックウッドとピンクアイボリーですが、リンシードオイルを浸みこませてあり、たまに蜜蝋で磨くくらいです。

    個人的にはアフリカンブラックウッドのチャンターは惹かれます!

    色々とチャレンジされているのですね。勉強になります。

  2. Koiwai

    柳 博さん

    いつも拝見してくださりありがとうございます!
    ミュゼットもアフリカン・ブラックウッドなのですね。
    リンシードオイルは何度も塗ると溝などが埋まっていきますので、こすれた部分にだけ薄~く指で伸ばすのが良いかと思います。
    蜜蝋だけでも十分ですが、時には植物系のオイルを与えると木が喜びますよ。笑

    ハイランドパイプのチャンターは、メーカーによって太さやホールの大きさが微妙に違うので、採寸してデータ取ると面白いかもです。

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